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続々 ・ お話

 続きです。

 先に謝らせてください。




 ごめんなさい。



「ちょっとロートさん。お姉ちゃんをこんな時間まで連れまわしていったい何してたのさ」
 唇を尖らせて言うのはライカの弟、レイジュ。実家のプチホテルの玄関先で、彼は星が瞬く夜空を指差していた。
 対峙して、という表現がしっくり来るかもしれない。レイジュの正面には頬を引きつらせたロートが腰に両手を当てて立っている。
「やかましい! 何もしてねぇよ」
「じゃあなんでこんなに帰りが遅くなるの。お姉ちゃんが出かけたのは朝なんだよ、朝!」
「しょうがねぇだろ、寝てたんだから」
「ね、寝てた!?」
 ガガーンという効果音を引っさげて、レイジュは盛大に驚愕した。
 が、すぐさまロートの拳骨が飛ぶ。
「いったーい!!」
「妙な想像してんじゃねぇ!! 俺がひとりで寝てただけだ! 寝不足だったんだよ!!」
「暴力はんたーいっ! どうしていつもいつも暴力に訴えるかなあ!」
「いつもいつもおまえが悪いからだろうがぁっ」
 互いに向かい合って手を組んで、一気に力を込めての押し合い。
 ロートはウィザードの癖に体力があるが、いかんせん相手はファイターのレイジュ。単なる力比べでは勝てるわけがない。
 それでも拮抗する力と力。無意識下での手加減なのかもしれない。
「ふたりとも、いつまでやっているつもり? ご近所に迷惑よ」
 どうにも決着がつきそうにないので、ようやくライカが口を出した。
 ロートもレイジュも「だってこいつが‥‥」と釈明しようとしたが、ライカの笑顔の前にすごすごと引き下がる。
 いつまでたっても手のかかる弟。
 その弟と同レベルらしい恋人。
 ため息をつきつつ、ライカはレイジュの首根っこを引っつかんだ。
「今日は一日、とても楽しかったわ。また行きましょうね、ロート君」
「ああ、また行こうな」
「ふふ‥‥楽しみにしてるわね。おやすみなさい。――ほら、レイジュも」
「おやすみー、ロートさーん」
 ライカに引きずられながらも大きく手を振って挨拶するレイジュのバイタリティを、ロートは心からすごいと思う。‥‥うらやましいとは微塵も思わないが。

 明かりのついた家。楽しそうな笑い声。迎えてくれる両親。


「また、行けたら、な‥‥」


 それらも、うらやましいとは思わないけれど。

 *

 数日後。
「ほんとーにいいのー? ロートおにーさーん」
 ロートの資料倉庫兼寝床では、ルディが首をかしげていた。
「いいって言ってんだろうが。おまえが両親みたいに立派な吟遊詩人になりたいと思ってるってのは、知ってるし。ちょうどいいだろ」
 ふたりは、この家で唯一邪魔な物の乗っていない、ベッドの上で話をしていた。‥‥いや、もうひとり。クィディも、ルディの横で小難しい顔をしている。
「でもー‥‥」
「クィディがいるから平気だ。むしろ俺にとっちゃ、おまえら兄弟を引き離しちまうなんて、悪いことしてんなぁって感じだ」
 床にはいつものように散乱している資料のほかに、小さな荷物がふたつ、置かれていた。
 そう、ちょうどシフールでも持てる程度の荷物が、ふたつ。
「ルディは修行を兼ねてドレスタットへ。クィディは俺よりも先にパリの師匠のところへ。俺たち全員が納得した決定だ、そうだろ?」
 ロートはルディの顔を見る。ルディがうなずく。
 次にクィディの顔を見る。クィディもうなずく。
「元気でな、ルディ。たまには手紙よこせよ」
 ルディの赤い髪をくしゃくしゃかき混ぜる。そのロートの表情は、多くの別れを経験した者にしか浮かべられない笑顔が、浮かんでいた。
「ふぇーんっ」
「げっ。いきなり泣くなよ!? あーもう‥‥クィディ、後は任せた」
「相変わらず、人に面倒なことを押し付けるのが好きだね」
「何とでも言え。俺はちょっと用事があるからさ、出発する時はちゃんと鍵かけてけよ!」
 泣いている子供を置いて出かけるのは、慰めるのが嫌だとか面倒だとか、そういう理由ではない。たったふたりの幼い兄弟の、別れを邪魔したくなかった。それだけだ。
 外に出てから、ロートは胸元から一枚の羊皮紙を取り出した。
 書かれている文字の筆跡は彼の師匠のもの。先日送られてきた、ロートの報告書に対する感想文及び指示書の一部だ。
 だがロートは内容には目もくれず、羊皮紙の一番下、隅の隅、端の端に残る、小さな赤銅色の染みを見つめていた。
 血の跡を。
「‥‥‥‥弟子にまで虚勢はってんじゃねぇよ。クソ師匠が」
 染みには布か何かで拭い去ったような痕跡がある。血の跡を隠そうとしたことは明白だ。
「さーて、俺も片付けちまわねぇとな、イロイロと」
 空を見上げる。晴天。
 
 まさにお出かけ日和だ。

+++++++++++++++++++++++++++++

 はい、羽鳥です。解説と言い訳を始めたいと思います。

 ロートの師匠は不治の病もちです。普段はある程度普通の生活をしていますが、たまに具合が悪くなると血を吐きます。そのたびに病気は少しずつながら悪化します。

 弟子として長い間一緒に暮らしていたロートは、これを知っています。だから血の跡を見た瞬間に、師匠のことが心配になるわけです。居ても立ってもいられなくなって、パリに戻ることを決意します(元はフランクで生活していた彼らですが、調査範囲など様々な都合から、パリに拠点を移していたのです

 それに伴い、ロートの助手をさせられていたシフール兄弟の進む道も分かれます。父や母のように世界を巡る吟遊詩人になって、両親と再会したいルディ。一方、黙々と作業をこなすことが実は性に合っていたため、ロートと共にパリへ行き、師匠の元で更なる研究に励もうとするクィディ。

 ロートとライカ、ふたりきりのお出かけは、最後の思い出作りのようなものでした、と‥‥‥‥‥‥あ、ごめんなさい石投げないでください石はやめてください。

 実際に、三人とも移動中&移動完了の状態です。メタなことを言ってしまえば、移動自体は背後の都合です。三人には申し訳なく思っています。

 第二話を書き始めるくらいのころから三人の移動は決定済みだったので、こういう風に話を持ってきてしまいました。以前も書きましたが、もともとはリクエストなのにこういう形にしてしまって申し訳ありません。後ほどメールを送らせていただきます。
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